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プロジェクト達成のためのプロダクトや、そこに至るまでのタスクを定義するのが『スコープマネジメント』です。ただうまく運用するためには、役割や定義といった基本を正しく理解しなくてはなりません。ここでは、スコープマネジメントの実業務および注意点について解説します。
目次
スコープマネジメントにおける「スコープ」は、プロジェクトにおけるユーザーと開発者に共通する「ゴール」だといえます。どのようなプロジェクトでも、ゴールが不明確もしくは食い違っていると、本当の意味での成功に至ることはありません。
プロジェクトの成功には、このようなスコープを常に把握する「スコープマネジメント」が必須です。ここではそんなスコープマネジメントの基礎知識を、わかりやすく解説します。
スコープマネジメントとは、1987年にアメリカの非営利団体PMIが発表した、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)に示されている領域の1つです。このPMBOKには、プロジェクトマネジメントに関する手法のノウハウがまとめられています。
現在PMBOKは、プロジェクトマネジメントの事実上の世界標準として浸透しています。おおむね4年おきに改定され、最新となる第7版は2021年に発行されました。
それまで曖昧だったプロジェクト管理を体系化し「プロセスをマネジメントする」ことの重要性を示したのは、PMBOKの大きな成果といえます。興味のある方は、ぜひ下からより詳しいPMBOKの特徴を確認してみましょう。
PMBOKとはプロジェクトマネジメントをまとめたもの。活用するメリットを解説
プロジェクトの成功率は一般に約20%程度とされることが多いのですが、厳密にいえばその数十分の1ともいわれます。その大きな原因の1つは、プロジェクト本来のゴールに対する明確な定義とメンバー全員との共有の難しさです。
しかしプロジェクト成功が本質的に「関わるすべてのステークホルダー=利害関係者が満足する結果に至ること」であれば、ゴールの明確な定義と共有は必須の要件といえるでしょう。
ここでいうステークホルダーは、単純に顧客や経営層だけを表していないことに注意が必要です。スポンサーや実際に利用するユーザー、受注側の営業部門や開発部門、協力会社なども含みます。
たとえごく一部のステークホルダーであっても、結果に満足できなければプロジェクトが成功したとはいえません。すべてのステークホルダーとスコープを共有し管理するスコープマネジメントは、まさにプロジェクトの「完全成功」のカギといえるでしょう。
スコープマネジメントを含む、プロジェクトのマネジメントには必要なスキルや活用できるツールがたくさんあります。適切なものを選ぶポイントは、次のリンクから確認するとよいでしょう。
プロジェクトマネジメントに必要なスキルや管理ツールの選び方を解説
プロジェクトをすべてのステークホルダーが満足する「完全成功」に導くためには、発生するリスクのマネジメントや必要な資格を持ったメンバー、複数のプロジェクトを客観視できるプロジェクトオフィスも欠かせません。
前提として複数のステークホルダーがそれぞれ想定しているスコープを正確に把握し、必要であれば調整・変更をしてすべてのステークホルダーが納得のいくスコープとして共有する必要があります。場合によっては進行中にスコープを変更するなど、プロジェクトを適切にコントロールすることもあるでしょう。
スコープマネジメントのゴールは、プロジェクトにおけるスコープをその変更まで含めて管理・整理し、本当に必要な要素だけをスコープに落とし込むことで、プロジェクトを完全成功に導くことだといえます。
そのために活用できる資格やリスク、マネジメントオフィスなど必要な要素を、より詳しく解説しているのが次の各記事です。
プロジェクトリスクマネジメントとは?リスクの意味やプロセスも解説
プロジェクトマネジメントオフィスを活用してプロジェクトの質を上げよう
プロジェクトマネジメントに関する資格一覧!メリットや難易度も解説
プロジェクトマネジメントのより深い理解に、ぜひ活用してください。
PMBOKにおけるスコープマネジメントでは、次のような2つのスコープが定義されています。
どちらもそれぞれのステークホルダーが、異なるスコープを認識している可能性があります。食い違いを整理するには、スコープをこの2つに分けてとらえることが重要です。
スコープマネジメントのプロセスごとの作業 |
スコープマネジメントの目的は、スコープの現状を調整・管理することです。しかし実際に取り組むと、プロセスごとにさまざまな作業があることがわかります。適切なマネジメントするには、それぞれのプロセスや作業も把握しなくてはなりません。
ここではスコープマネジメントの作業をプロセスごとにまとめ、それぞれ詳しく解説します。
このプロセスのゴールはスコープを定義して文書化したり、検証したり、マネジメントの方針を作成したりといった、スコープそのものについての計画の立案です。
これ以降は実際に、顧客の要求を収集して改めてスコープを定義・検証・マネジメントするのですが、このプロセスはそういった作業をどう進めるかという「大枠」を示すという役割を果たします。具体的に作成するのは次の2つの計画書です。
このプロセスのゴールは、顧客など各ステークホルダーのニーズを、もれなく収集し定義することです。プロジェクトの目的や主要成果物が記載されたプロジェクト憲章と、すべてのステークホルダーの情報がわかるステークホルダー登録簿がインプットとして使われます。
ただプロジェクト憲章にあるのは、ステークホルダーのやや抽象的なニーズです。そのため登録簿にあるそれぞれのステークホルダーから聞き取りながら、より具体化したのが要求事項文書です。要求事項はニーズを聞き出すごとに詳しく記載されていきます。
次にプロジェクトにおいて要求事項が適切に処理され、スコープに落とし込まれているかを確認する「要求事項トレーサビリティ・マトリックス」を作成します。要求トレーサビリティ・マトリックスに記載されているのは、要求元の情報や優先度、承認・変更などの状況です。
このプロセスでは要求事項を踏まえ、スコープをより詳しく定義するためのアプローチは、次の2つです。
検討と具体化には、顧客の関係部門や開発担当者などの専門家を含まれます。
WBSとは「Work Breakdown Structure」の略で、プロジェクト全体の作業を細かく分解した構成図です。プロジェクト・スコープ記述書と要求事項文書から、プロジェクトの作業をWBSに落とし込みます。
WBSにすることで各工程が明確になり、漏れを防ぐことができます。作業がより具体的になるため、スケジュールを決めたり役割を分担したり工数を見積もったりすることも可能です。何よりもそれぞれの作業がどのようにしてスコープに至るのか、明確に示すことができます。
完成した要素成果物を顧客などがチェックし、要求事項や基準を満たしているかを検査し正式に受け入れるためのプロセスです。プロジェクトスコープ・マネジメント計画書に基づいてチェックされ、問題がなければ正式に受け入れられます。
チェックの段階はおよそ次の2つです。
スコープコントロールは、2種類のスコープであるプロジェクトスコープとプロダクトスコープを管理し、定められているスコープへ調整するプロセスです。
このプロセスはスコープのベースラインと要素成果物の現状を比較・分析して差異が認められるときや、要素成果物における当初の予定に変更が発生したときに行われます。当初予定していた作業や必要な成果物が増えたときや減ったときも同様です。
スコープマネジメントで押さえるべきポイント |
スコープマネジメントはプロジェクト成功のカギとなる、大切な要素です。それだけに正しく運用される必要があり、プロジェクトマネージャーが押さえるべきさまざまな留意点があります。
ここで紹介するのは、そのうち特に重要とされるテクニックです。またスコープマネジメントの進め方についても、詳しく解説していきます。
プロジェクトはすべて計画通りの進むとは限りません。進行するにつれて当初の計画から変更が必要となることも多く、作業が増えたり減ったりします。
プロジェクト内容によっては期待した成果要素物が得られず、その原因追求のため開発段階に戻ることも少なくありません。このようなサイクルを何度も回せば、それに応じて計画も見直され、スコープも見直されます。
大切なのはこのような変更をすぐに反映し、常に最新の状態を維持することです。
変更の都度定められている品質基準に照らしあわせ、見直しを判断しなくてはなりません。そのためにもさまざまな計画書を充実させる必要があるのです。
プロジェクトが進行するにつれて、盛り込みたい要件は増えていくのが一般的です。より品質の高いものを目指すという意味では、さまざまなアイデアが出るのは歓迎すべきことですが、すべてを実現するのは容易ではありません。
検討にも時間や労力が必要な上、実行できなければそれらがムダになる可能性さえあります。そのような事態を防ぐためには、要件の洗い出しに期限などの制限を設けるのが有効です。それまでに挙げられたアイデアをもとに、スコープはプロジェクトマネージャー側で決めます。
スコープは成果物の品質を満たしていなくてはなりませんが、それ以上の品質を盛り込む義務はありません。計画書をもとに、過不足なく決定するとよいでしょう。
スコープが曖昧なままであるプロジェクトは、メンバーがプロジェクトの本来のゴールではなくそれぞれが誤ったゴールを目指して進行させる可能性が高いため、成功する確率はかなり低くなってしまいます。
そんな事態を防ぐには、プロジェクトマネージャーがメンバーにタスクを発注するとき、お互いのスコープの認識にズレが内容細心の注意を払うことが大切です。事前にスコープを可視化し、メンバーが誰でも同じように、最新のスコープを可視化し、容易に把握できるよう整えておく必要があります。
スコープマネジメントにおける注意点 |
顧客の要望をもとに必要な機能に落とし込むのがスコープマネジメントのゴールですが、顧客のすべての要望を受け入れなくてはならないわけではありません。それは、声高に叫ばれている要望が必ずしも欠かせない要望だとは限らず、ただ影響力の高い人物が発しただけである可能性もあるからです。
このような事態は、要求事項の作成にごく一部のメンバーだけが関わっているケースに見られます。真のニーズを見極めるには顧客やそのうち要望に深く関係する部門との信頼関係が必要です。
本当の意味でのプロジェクト成功のためには、目の前の担当者だけでなく要望に深く関わる人も含め、真のニーズを引き出すことが求められます。
まとめ |
スコープマネジメントとはプロジェクトの最終成果物を明確にし、必要な作業範囲を定め管理することです。プロジェクトに関わるすべてのステークホルダーが満足する結果のためには必須のテクニックといえるでしょう。
プロジェクトマネージャーは常に最新の状態を維持して過不足なくスコープを決定し、メンバー全員がわかるよう可視化することが求められます。また要望は際限なく受け入れるのではなく、期限を設けるなど適切に選別することが大切です。
今12万以上のチームがプロジェクトマネジメントツールとして選んでいるmonday.comなら、すでに利用しているツールと併用するなど設定も数分で済みます。難しかったスコープのマネジメントや共有が、よりスムーズに行えるでしょう。
スコープマネジメントはプロジェクト成功のカギです。その意義を正しく理解し、成功に導くためにも、ただしい運用に努めましょう。