体制図とは、プロジェクトの管理体制などを事前にまとめておく図面のことです。一般的に、プロジェクトマネージャが体制図の作成を担当します。この記事では、プロジェクト体制図の基礎知識や作る目的、上手に作るコツを解説します。
目次
はじめに、プロジェクト体制図の基礎知識として、以下のことを解説します。
・プロジェクト体制図とはどのようなものか
・プロジェクト体制図を作るタイミング
・PMBOKにおける体制図の位置付け
それぞれの基礎知識を確認し、プロジェクト体制図を理解していきましょう。
そもそもプロジェクトとはどのようなものなのかについて、詳しい内容は以下をご覧ください。
プロジェクトとは目標達成のための業務│定義や成功のポイントを解説
プロジェクト名の決め方について知りたい方は、以下の記事で確認してみましょう。
プロジェクト名の決め方が成否を左右する?命名の基準や方法を解説
プロジェクト体制図とは、だれがどのようなことを実施するのかを記載して、それぞれの役割をはっきりとさせるための図です。メンバーになった人の名前やプロジェクトの構成が理解できるようになっています。
プロジェクト計画書の一部として体制図が書かれており、計画書のなかでも重要な要素の1つです。会社の組織図のように描かれ、だれが指揮をとるのかがわかります。
プロジェクト体制図を作るタイミングは、プロジェクト初期の段階です。体制図を作成することは、プロジェクトマネージャがはじめにおこなう仕事の1つだといわれています。
体制図づくりをおこなうのは、プロジェクトを計画し、目的や最終的にどのようになるといいのかを決めてからです。目標や最終的なゴールに向かうためには、どのような工程にどういった人員が必要であるのかを考えながらプロジェクト体制図を作成します。
その後プロジェクトを実際に進めていくと、はじめの段階で決めていた体制から変化していくケースがあります。途中でプロジェクト体制が変わった場合には、その都度体制図の更新をおこないましょう。
なお、プロジェクトを立ち上げる際には、目的やゴールを確認するためにプロジェクト憲章を作成します。プロジェクト憲章やプロジェクトマネージャについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事で確認してみましょう。
プロジェクト憲章とはプロジェクトの企画書のこと。必要性や記載事項を解説
プロジェクトマネージャとは?仕事内容や必要スキル、関連する資格
「PMBOK」とは、プロジェクトマネジメントに関する知識や正しく進める方法について、体系的にまとめたものです。現在、PMBOKは世界中でプロジェクトマネジメントをおこなう際の標準になっています。
PMBOKにとって重要な要素は2つあり、その1つが「10個の知識エリア」と呼ばれる知識です。プロジェクト体制図は、10個ある知識エリアのうち「人的資源マネジメント」にあたるエリアの「人的資源計画」に位置づけられています。
プロジェクト体制図を作る4つの意味 |
プロジェクト体制図を作る4つの意味は、以下のとおりです。
・メンバー間の認識を統一できる
・指揮系統を定義できる
・プロジェクトの構造がわかりやすい
・変更点を理解しやすい
このように、プロジェクトを円滑に進めていくために、体制図は重要な役割を担っているものです。それぞれの内容を詳しくチェックしていきましょう。
プロジェクト体制図を作る1つ目の意味は、メンバー間の認識を統一できることです。プロジェクト参加メンバー全員が体制図を確認することで、「プロジェクトのどの工程を誰が担当するのか」、「だれの責任で進めていけばいいのか」、「〇〇の件でなにかトラブルが発生してしまったときにどのチームが対応にあたるのか」などがスムーズに理解できます。
体制図を作らずに口頭で役割分担を指示した場合、その場ではわかったつもりになっていても、後からなんらかの件の確認をとりたくなった際に担当者がわからない可能性があります。体制図を作っておけば、後から確認する際にも便利です。
プロジェクト体制図を作る2つ目の意味は、指揮系統を定義できることです。プロジェクトの参加メンバーが増えると、指揮系統が複雑になってわかりにくくなります。なにか対応を確認したいことがあってもだれに相談すべきかを迷ってしまい、「無駄に時間をかけてしまってプロジェクトの進捗が遅延する」、「問題がそのままになる」といったリスクを負いかねません。
体制図を作成して指揮系統を定義すれば、だれに報告して指示を受ければいいのかがすぐにわかります。指示を出す側も指示を受けて実行する側も、スムーズに仕事ができるようになるのです。
プロジェクト体制図を作る3つ目の意味は、構造がわかりやすくなることです。プロジェクトが始まるときのキックオフ会議では、会議に参加したメンバーに対してチームごと、セクションごとの任務を説明し、チーム編成やメンバーの役割分担を伝えます。
プロジェクトの内容や指揮系統、担当者がすぐに理解しやすいため、キックオフ会議での説明がスムーズです。また、外部の相手にプロジェクトの説明をする際にも重宝します。
プロジェクト体制図を作る4つ目の意味は、変更点を理解しやすくなることです。体制を決定したあとでも、プロジェクトを進めていくと新しい課題に対応するチームが必要になるケースなどがあります。
プロジェクトの体制が変化した際に随時体制図の更新をすれば、変更点を周知可能です。逆に、体制が変化したにもかかわらず体制図を以前のままにしておくと、混乱を引きおこしてしまう可能性があるでしょう。
良いプロジェクト体制図の書き方の例 |
良い書き方がされている体制図は、それを見るだけでプロジェクトを実行する際の指示系統や作業チームの責任者を理解できるようになっているものです。体制図の頂点には最終的な決定権を持つプロジェクトオーナーが書かれ、すぐ下にプロジェクトマネージャを配置します。その下に業務ごとに大きく分けたチームのリーダーを配置し、さらに下部に実務にあたるスタッフをまとめるリーダーを記載しましょう。
なお、ご紹介した書き方は体制図の一例です。指揮系統がはっきりとわかるものであれば、企業やプロジェクトにあわせて変更を加えてもいいでしょう。
悪いプロジェクト体制図の書き方、2つの例 |
プロジェクト体制図の悪い書き方の例は、以下のとおりです。
・複数の指揮系統がある体制図
・説明が省略されすぎている体制図
先述したプロジェクト体制図の作成によるメリットは、良い体制図が作られている場合にあてはまります。複雑でわかりにくい体制図の書き方では、プロジェクトの関係者が混乱する要因となってしまう可能性があるため注意しましょう。
プロジェクト体制図の良くない書き方の例として、1つ目は複数の指揮系統がある体制図です。プロジェクトの関係者が増えて指示系統があいまいな状態になってしまうと、だれに指示をあおげばいいのかがわかりにくくなります。
また、体制図に複数の経路があり、下部に書かれているチームに対して指示する線が2通りに繋がっている場合も、図を見たときに複雑でわかりにくくなってしまうでしょう。報告先の分散により、プロジェクトの情報の取りまとめに影響を及ぼしてしまう可能性があります。
2つ目の例は、説明が省略されすぎている体制図です。複雑な体制図もわかりにくいですが、説明を省きすぎている体制図もすぐに理解しにくくなります。
たとえば、チーム名が書かれているものの担当する業務がどれにあたるのか表記があいまいであるケースや、イメージしにくいチーム名がつけられていて説明がないケースなどがあてはまります。
プロジェクト体制図を上手に作る4つのコツ |
プロジェクト体制図を上手に作るための4つのコツは、以下のとおりです。
・はっきりと役割分担を決める
・指揮系統を一本化する
・同じ人が兼任する際は理解しやすい記載にする
・変更点があれば体制図もすぐに直す
先述のとおり、体制図をうまく作らないとプロジェクトの進行自体に影響を及ぼすかもしれません。これら4つのコツを詳しくチェックし、わかりやすい体制図を作れるようになりましょう。
プロジェクト体制図を上手に作るための1つ目のコツは、はっきりと役割分担を決めることです。だれがどのような作業を担当しているのか、役割分担をはっきりとさせ、確認作業などをスムーズにおこなえるようにしましょう。理解しやすい体制図にするためには、あいまいな表現ではなく、外部の人からもわかりやすくて端的な表現にすることがコツです。
2つ目のコツは、指揮系統を一本化することです。だれに報告するのかがわからない状況でプロジェクトの情報が錯綜してしまうことを避けるために、指示系統の一本化は重要なポイントといえます。トップから見ても現場スタッフから見てもわかりやすい表記になっているかをチェックし、少し見ただけで理解できる体制図にしましょう。
同じ人が兼任する際に理解しやすい記載にすることも、上手に体制図を作るコツの1つです。同じ人が違う業務を兼任していると、体制図を見たときにわかりにくくなってしまいがちです。「書き間違いだろうか」と思われてしまう場合もあります。
もしも兼任する業務があるのであれば、注釈などを使って相手に伝わる書き方をしましょう。
最後に紹介するコツは、変更点があれば体制図もすぐに直すことです。たとえば、新しいチームが参加することになったり、リーダーが増えたり、プロジェクトが進んでいくうちに担当作業が終了したチームがあったりなどが考えられます。プロジェクトの途中で体制が変わる場合には、速やかに変更して周知しましょう。
なお、プロジェクトの振り返り作業も、今後に活かせる重要な工程の1つです。プロジェクトの振り返りに関する詳細は、以下の記事をご覧ください。
プロジェクトの振り返りを効果的におこなう手法!目的や注意点を解説
まとめ |
体制図とは、誰にどのような業務を担当させるのかをプロジェクトの初期段階で決めて周知するための図です。基本的にプロジェクトマネージャが作成を担当します。
体制図がわかりにくい場合、情報共有や相談、確認をだれにすればいいのかがはっきりせず、プロジェクト運営に支障をきたす可能性があります。体制図を作成することになったプロジェクトマネージャは、上手に作る4つのコツなどを参考にして理解しやすい体制図づくりを目指しましょう。
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